ゴム時間が縮み始めた?

インドネシアで時間といえば、ゴム時間というのがあるのをご存知ですか?

ゴム時間、インドネシア語ではジャム・カレット(jam karet)というのですが、それは、ゴムのように伸び縮みする時間、という意味です。

どういう時に、ゴム時間というのでしょうか。

▼伸びたり縮んだりのゴム時間

たとえば、誰かと10時に会う約束をしたとします。でも、その人は、約束の時間よりも1時間以上遅れて、やってきました。こういうのを「ゴム時間」というのです。

昔、まだ携帯電話やインターネットがなかった頃、筆者は、約束した時間に相手と会えるのは、むしろ珍しいことでした。

日本式に約束の時間に約束の場所へきっちり出向いても、たいていの場合、相手は現れません。30分経ち、1時間経ち、2時間経ち・・・。ようやく、相手が現れます。ここまでくると、もはや怒る気力も萎えてしまいます。

でも、遅れてきた相手は、悪びれた様子もなく、遅くなった理由を色々と述べたてます。「時間を勘違いしていた」ということもよくあります。

▼3時間以上待たされた政府主催セミナー

携帯電話もインターネットもない時代には、連絡の取りようもありません。日本式には、だからこそ、約束の時間に間に合うように行くのが相手に対する誠意だと思うのですが・・・。

また、政府主催のセミナーなどに出席すると、開会挨拶を行う大臣や地方首長が会場に現れるまで、出席者は待ち続けます。筆者の経験では、州知事の来訪が遅れに遅れて、朝8時からのセミナーがようやく昼前の11時ごろから始まったことがあります。

▼縮み始めたゴム時間

そんなゴム時間が、段々に縮んできたような気がします。

昔は、1時間ぐらい遅れるのが当たり前だったのが、今ではそれが30分ぐらいになっています。今では、携帯電話やインターネットで、約束の時間に遅れそうならば連絡が入ります。もっとも、交通渋滞などで時間の計算ができず、遅れることはよくあるので、時間厳守できないことに対しては、けっこう寛容です。

地下鉄工事中のジャカルタ・スディルマン通り(筆者撮影、2014年11月6日)

面白いのは、ジャカルタでゴム時間が1時間から30分へ縮むのに対して、地方都市では2時間が1時間へ縮む、といったことが同時進行的に起こっているように感じます。

ゴム時間の長さ自体には場所により違いはありますが、全体として徐々にゴム時間が縮んできているように感じます。

今、大統領が出席するイベントでは、遅くても開始30分前に着席し、大統領の来訪を待つことを厳しく求められます。

▼ゴム時間は無くなってしまうのか

携帯電話やインターネットで、渋滞情報や位置情報が共有できるようになり、少しずつ時間が計算できるようになってくると、ゴム時間のゴムも縮んでくるようです。

それは、もしかすると、いつ来るか分からない、来てくれたらラッキー、と大らかに相手を待てた時間が、時間泥棒によって奪われているのかもしれません。

インドネシアから「ゴム時間」という言葉がなくなる時代が、いつか、来てしまうのでしょうか。

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